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瀬音とボクとよしみくん
第20章 有貴くんの場合①○
「ちょっと、しつこいって、有貴くん、いい加減にして」
「お願い、もう一度、純ちゃんに会わせくれ」
俺は純ちゃんが忘れられなかった。
だから、マリアに、どうしても純ちゃんをもう一度紹介してと懇願した。
「連絡先知らないから」
「いとこなんでしょ」
「嘘だよ」
「嘘? じゃあ誰なの」
「さぁ?」
「さぁって、とぼけないでよ。あんなにマリアちゃんに似ててかわいいのに?」
「なによ? あたしよりかわいかったって?」
マリアが、キツい目で俺を睨む。
一度もデートさせてくれないくせに、他の子がかわいいとなると怒るんだ。
「違うって、マリアちゃんの方がかわいいけど、無理なんでしょ? だから、代わりに純ちゃんをもう一度紹介してよ」
嘘だった。
純ちゃんの方がかわいいし、優しいし、ちょっとボーイッシュで恥ずかしがる姿に魅了された。
「お願いだよ。いとこなんでしょ」
「ダメだって」
「なんで」
「う~ん、実は妹なの」
「は?」
「双子の妹なの。あんた、無理矢理キスしたでしょ。大事な妹にこれ以上変なことされたら……」
「双子なら、同級生でしょ?」
マリアとは幼稚園から一緒だけど、そんな話、聞いたこともない。
「そうなるわね……あの、実は、あたしたちは、みなしごで、施設育ちなの。で、ものごころつく前にそれぞれの家にひきとられたってわけ。わかった?」
嘘くせ~
そこまでして、紹介したくないのか。
そのあと、何度もお願いしても、結局、教えてもらえなかった。