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瀬音とボクとよしみくん
第20章 有貴くんの場合①○




なのに……


俺は、瀬音を呼び出した。


「てめぇ、純ちゃんを傷つけやがったな」


「は?」


「純ちゃんと付き合ってるくせに、マリアとも付き合いやがって」


俺は瀬音の胸ぐらを掴み、今にも殴り掛かる体勢に。


返答次第では殴ってやる。


「あぁ、そのことか」


「あぁ、じゃねぇ。どうなんだ」


「お前、どこまで知ってる」


「は? どこまでって」


「純のこと、女性として、好きなのか?」


「当たり前だろ」


「よし、殴れ」


「は?」


「あいつを傷つけたのは間違いない」


「てめぇっ……」


俺は瀬音を殴った。


本当は殴るつもりじゃなかったのに。


「ぐっ……」


倒れた瀬音に手を貸して立たせる。


そして、俺も謝る。


「すまん。俺も殴ってくれ。実は、純ちゃんに無理矢理キスをしたことがあって、だけど……ぐはぁっ」


言い訳する前に殴られた。


早いって。


「わりぃ、殴る権利なんかないんだけど」


「はら、はふふな」


なら殴るな。


絶対、お前の方が強かったって。


結局、瀬音にも、純ちゃんを紹介してもらえなかった。


……もう。あいつはいないよ……


もう別れた、ということなのか、瀬音は意味深なことを言ってはぐらかした。


いやいや、これじゃ、ただの殴られ損ではないか。


くそっ。


もう一度会いたい……


会って、無理矢理キスしたことを謝りたいだけなのに。


そして、もう一回キスをしたいだけなのに。


そして、夢のつづきをしたいだけなのに……






そして……
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