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瀬音とボクとよしみくん
第21章 有貴くん② 劇
あぁ、純ちゃん……


純ちゃん、純、純……


何度も忘れようとしたけど、それは無理だった。


会えないからこそ、余計に願望がつもりにつもり、抑えきれない。


もう一度だけ会えたなら


純……


「……なに?」


は?


目の前には、ブサイクな女がいた。


いや、女装した男子だ。


そういえば、こいつも純っていう名前だったか。


「一ノ瀬、お前……いや、なんでもない。続けて」


「あ、うん」


つい、ぼーっとして、妄想の中の純ちゃんに話しかけていたはずが、本当に声を出していた。


めんどくさいことに、俺は、学園祭でやる学年劇の監督兼脚本を押しつけられた。


適当におとぎ話をつなぎ合わせた話を書き上げて、ただ今、稽古中。


にしても、ブサイクだろ、一ノ瀬純。


カツラは生徒お手製の毛糸で作ったカツラだし、化粧は絵の具だから、唇がバケモノみたいにデカくて赤い。


ドレスはまだ制作中で、学生服のままだから余計にひどい。


一応、国一番の美女ってことで、このあと王子様に見初められてキスをするんだけどな。


いくら適当に作った脚本とはいえコメディではない。
笑われるのはしゃくだけど、絶対笑われるだろ、これ。


うちの学校は男子校ってわけではないのだが、隣に女子校があるせいか、女子がまったくいなくて、実質男子校だ。


だから、劇に出るキャストは全員男子だ。


にしても、今どきカツラだって売ってるし、化粧だって……
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