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瀬音とボクとよしみくん
第21章 有貴くん② 劇
「……っぷ、はははっ、ダメだ、なんだよ、その顔は」


稽古はクライマックスのキスシーンだが、王子役の男子が、一ノ瀬の顔を見て大笑いする。


「……有貴、ダメだ、キスなんてできねぇ」


「別に、本当にしなくてもいいんだ。振りだけにしろって先生も言ってたろ」


「振りだけって……」


一ノ瀬はそのバケモノみたいな顔でキス顔をする。


まるで、わざと笑かすかのように。


周りのみんな大爆笑。


「……ぷはっ、っ無理だって、振りだけでも」


確かにな。


「台本では、魔法使いの力で、絶世の美女に変身するんだろ」


「あぁ」


よくあるパターンだ。


「これでいいのか?」


一ノ瀬は、今度は投げキッスのしぐさをする。


こいつ、絶対にわざと笑かしにかかってる。


絶対に笑ってたまるかと、必死でこらえる。


「……まぁ、前半はコメディでもいいけど、その分、ラストはシリアスにいきたい」


「俺、一つ案あるんだけど」


「案?」


「変身したあとの役は女子にやってもらわねぇ?」


「は? 女子に? どこにいるんだよ、ほぼ男子校のこの学校に」


「いるだろ。隣の女子校に」


「は? 何言ってんだ、そんなの無理に決まってんだろ」


「無理か?」


「ほぼ男子校の劇に誰が好きこのんで。それに先生も許さないだろう」


「たとえば、マリアは?」
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