この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
瀬音とボクとよしみくん
第21章 有貴くん② 劇
「……っぷ、はははっ、ダメだ、なんだよ、その顔は」
稽古はクライマックスのキスシーンだが、王子役の男子が、一ノ瀬の顔を見て大笑いする。
「……有貴、ダメだ、キスなんてできねぇ」
「別に、本当にしなくてもいいんだ。振りだけにしろって先生も言ってたろ」
「振りだけって……」
一ノ瀬はそのバケモノみたいな顔でキス顔をする。
まるで、わざと笑かすかのように。
周りのみんな大爆笑。
「……ぷはっ、っ無理だって、振りだけでも」
確かにな。
「台本では、魔法使いの力で、絶世の美女に変身するんだろ」
「あぁ」
よくあるパターンだ。
「これでいいのか?」
一ノ瀬は、今度は投げキッスのしぐさをする。
こいつ、絶対にわざと笑かしにかかってる。
絶対に笑ってたまるかと、必死でこらえる。
「……まぁ、前半はコメディでもいいけど、その分、ラストはシリアスにいきたい」
「俺、一つ案あるんだけど」
「案?」
「変身したあとの役は女子にやってもらわねぇ?」
「は? 女子に? どこにいるんだよ、ほぼ男子校のこの学校に」
「いるだろ。隣の女子校に」
「は? 何言ってんだ、そんなの無理に決まってんだろ」
「無理か?」
「ほぼ男子校の劇に誰が好きこのんで。それに先生も許さないだろう」
「たとえば、マリアは?」
稽古はクライマックスのキスシーンだが、王子役の男子が、一ノ瀬の顔を見て大笑いする。
「……有貴、ダメだ、キスなんてできねぇ」
「別に、本当にしなくてもいいんだ。振りだけにしろって先生も言ってたろ」
「振りだけって……」
一ノ瀬はそのバケモノみたいな顔でキス顔をする。
まるで、わざと笑かすかのように。
周りのみんな大爆笑。
「……ぷはっ、っ無理だって、振りだけでも」
確かにな。
「台本では、魔法使いの力で、絶世の美女に変身するんだろ」
「あぁ」
よくあるパターンだ。
「これでいいのか?」
一ノ瀬は、今度は投げキッスのしぐさをする。
こいつ、絶対にわざと笑かしにかかってる。
絶対に笑ってたまるかと、必死でこらえる。
「……まぁ、前半はコメディでもいいけど、その分、ラストはシリアスにいきたい」
「俺、一つ案あるんだけど」
「案?」
「変身したあとの役は女子にやってもらわねぇ?」
「は? 女子に? どこにいるんだよ、ほぼ男子校のこの学校に」
「いるだろ。隣の女子校に」
「は? 何言ってんだ、そんなの無理に決まってんだろ」
「無理か?」
「ほぼ男子校の劇に誰が好きこのんで。それに先生も許さないだろう」
「たとえば、マリアは?」