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瀬音とボクとよしみくん
第30章 有貴くん⑥ 失恋
会場は再び静まり返っていたが、やがて、俺以外にも声援を送る人がちらほらと。


「頑張れー」


「あと少し」


会場中が純を応援する雰囲気になり、純も、苦しそうになりながら、必死で泳ぎ、とうとうゴールした。


すると、瀬音が、純に向かって手を伸ばす。


純と瀬音は見つめ合うが、言葉はかわさない。


息も絶え絶えな純はプールから上がってもふらふらだが、そんな純を瀬音は支えるように抱きしめる。


会場中には、拍手と歓声が沸き上がる。


初心者丸出しの子どものような泳ぎの選手を、県内トップの選手が待ち構えて、抱きしめ合っている。


まるで、男同士の友情ドラマでも勝手に想像しているのだろうか。


あぁ、くそ、くそっ。
見てらんねぇ。


俺は席を立ち、歓声が鳴り止まない中、会場を急いで出た。


泣いたことなんか、ここ何年もないのに。
俺の目からは涙がこぼれていた。


感動の涙か?


いや、失恋の涙なのか?


わからない。


くそっ。
今度、純を泣かせることがあったら、瀬音の奴、おもいっきり殴ってやる。


あぁ、ロビーで、ただ一人、立ち尽くして涙を拭う俺。


そんな奴は俺だけだろうな、と思ったら。


俺以上に号泣している奴が。






あ、峰岸くん……
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