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乳房星(再リフォーム版)
第35章 私たちの望むものは
ゆりこは、一酸化炭素中毒で数時間意識不明の状態におちいったあと、一命を取り留めた。

しかし、胎内の赤ちゃんは命を堕とした(おとした)。

けんちゃんは、ゆりこが書いた手紙数通を読んでみた。

その中で、10月3日に宍喰(ししくい・徳島県海陽町)の竹ヶ島でゆりことカレが海に転落して、尾鷲市まで流された事件の原因が明らかになった。

それによると、ゆりこの胎内の子の父親がはちろうであったこと…はちろうとはハートマーケット(テレクラ)で知り合った…はちろうはユウジュウフダンなので、ゆりこに気持ちを伝えることができない…だから、知人のホストの男(ゆりこが逆ナンで知り合った男だった)に頼んだ…

…と記されていた。

文章の最後に、ゆりことはちろうは肉体関係のみであって、結婚する気は全くないと記されていた…

つづいて、てつろうさんにあてた遺書を読んでみた。

てつろうさんにあてた遺書は、うらみの文章がつづられていた。

てつろうさんは、ゆりこに対して『研究の成果が世に認められて表彰されたらゆりこを迎えに行く。』とプロポーズした。

けど、表彰された翌日から超多忙になったのでゆりこと会うことができんかった。

最後に『てつろうさんのせいで汚い女になった…てつろうさんのせいでゆりこの人生はズタズタになった…』と記されていた。

もう1枚の遺書には、多賀家の家族に対するうらみがつづられていた。

政子六郎夫婦と3組の兄夫婦の家族とあつろうと和子がズタズタに傷つく文章が並んでいた。

しかし、たつろうさんについては記載されていなかった。

(これ、どういうことやねん…)

最後に、けんちゃんあてに書かれた手紙にはこうつづられていた。

けんちゃんにお似合いのいい人がみつかるといいわね…

ただそれだけであった。

なんやねんコレは一体…

けんちゃんは、今まで経験したことのない虚空感に襲われた。

ゆりこは、今回の一件で多賀家に多大な損害を与えた罰としてあつろうとお見合いをして結婚することになった。

その一方で、すみれさんは裕介夫婦にけんちゃんと結婚できませんと一方的に断ったあと、仕事をやめて松山から出てよそへ移った。

けんちゃんは、ゆりこをまだ愛しているのでこの先結婚できる見込みはなくなった。
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