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乳房星(再リフォーム版)
第142章 春遠からじ
時は、1988年7月1日のことであった。

(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)

ゆめいろ市から家出して放浪をつづけている16歳の私は、JR鹿児島本線の各駅停車の電車に乗って旅をしていた。

電車の窓に、戸畑八幡間の工場群が映っている。

16歳の私は、前日まで下ノ関に滞在していた。

その時に出会った人が私に『お前、ここへ行け。』と言うてメモ用紙を渡した。

私は、メモ用紙に記載されているある場所へ行くために電車に乗って旅に出た。

時は午後2時過ぎであった。

JR戸畑駅で電車を降りた私は、渡し船に乗って若松区へ向かった。

ところ変わって、若松区桜町にある商店街の露地裏にて…

たどり着いた場所は、こじんまりとした洋食屋さんであった。

私は、おそるおそる洋食屋さんのとびらを開いて店内に入った。

店に入った私は、『ごめんください。』と言うて店の人を呼んだ。

「ごめんください…ごめんください…」
「はーい。」

奥から、女性の声が聞こえた。

その後、のれんの奥から女性主人・保岡ひろこ(以後、ひろこ姐はんと表記・やすおかの姐はんと表記する場合あり)が出てきた。

「どちらさまでおますか?」
「あの~、保岡屋はこちらでおますか?」
「保岡はうちでおますが、あんたは誰やねん!?」
「私は、下ノ関である人からの紹介でここへ来ました。」
「あっ、そうなのぉ~」

ひろこ姐はんは、ものすごくめんどくさい表情で客席のイスに座ったあと、あつかましい声で私に言うた。
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