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彼女が喜んでいるなら、自分はもちろんうれしいのだけれども…
第1章 返事
シンヤは、亜美(あみ)からメールをもらった。
「返事をするから、校庭の時計台の裏に来てください」
亜美が待っている場所が時計台の裏、と知って、シンヤは狂喜した。

この日の前日、シンヤは、前から気になっていた2学年下の女子、亜美に告っていた。
「きみが…、好きだッ!」
すると亜美は、その美しい顔でにっこりと微笑んで
「先輩…、お気持ち、うれしいです~♡明日、返事をするので、待っていてください」
と答えた。

そして今日、午前中の授業が終わると、亜美からメールが届いた。
時計台の裏で待っているから、来てくれ、と。
この学校には、告白にまつわる伝説がある。返事をする場所が時計台の前だと「NO」、時計台の裏だと「OK」というのである。その理由は、時計台の前だと人目に付く、つまり女子がどうでもいいと考えているから。時計台の裏だと人目がない、つまり女子がその恋心を他人に知られたくないと思っているから、とかいうことらしい。

校庭の時計台。
時計台といっても、小さなものである。高さは、3メートルくらい。
その表には、誰もいない。
シンヤは、その裏に回った。
いとしい人影が、いた。
「お待た…」
と言いかけ、シンヤは気づいて、ビクッとした。
そこには、先客と思しき男子が2人、いたからだ。

2人とも、シンヤがよく知っている男子だ。
ひとりは、バスケ部3年のタケシ。
もうひとりは、テニス部3年のヒロ。
ちなみにシンヤは、テニス部3年である。

シンヤが、タケシ・ヒロがいるのにびくついて、ちょっと遠慮気味にしていると、亜美が
「シンヤ先輩、こちらに来てください」
という。
え?と思いつつ、亜美が言うので、シンヤはタケシ・ヒロと並ぶようにして亜美の前に進み出た。

「じゃ、先輩がた、昨日の返事をします。OK、です」
シンヤは、一瞬、やったあーっ!!!と叫びかけ、すぐに気づいて思いとどまった。
隣りのタケシも、ヒロも、一瞬ガッツポーズをやりかけ、すぐそばに他に男子が2人いるのにすぐに気づいて、それをやめていた。
ど、どういう、こと???
いや、シンヤには、分かった。もちろん、タケシ・ヒロも、分かっているだろう。
前日かそれ以前に、シンヤと同じようにタケシ・ヒロも、亜美に告ったんだ。
そして、今、亜美のそれに対する返事が、なされたんだ。

「わたし、先輩たちとお付き合いしますッ!!!」
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