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籠の中の天使
第9章 告白
南斗と作るお料理が楽しくて、南斗と食べるご飯が美味しくて、南斗と観るテレビの時間が幸せな時間となる。
僅かな時間でも南斗の傍に居たいと願う私に
「明日から学校だろ?早く寝ろよ。」
と言って南斗が背を向ける。
南斗だって辛いのだから…。
我儘を言って困らせるのは嫌なの…。
聞き分けの良いフリをして自分の部屋でベッドに入る。
幸せだもん。
私よりも辛い人はいっぱい居るよ。
そう自分に言い聞かせて未来へ向かうしかない。
明日は4時間授業…。
教室には行かなくても大丈夫だと南斗も言ってた。
その翌日は終業式で、すぐに夏休みになるから南斗といっぱい居られる時間が増える。
我慢して頑張ろう…。
南斗と過ごせる時間だけを心の支えにして学校に行く。
「今日は家に帰れよ。」
当たり前を言う南斗の言葉が辛いけど
「明後日からは南斗の部屋で良いんだよね?」
と確認すれば南斗がニヤリと笑う。
「明後日からは咲都子の下手な飯かー…。」
「南斗の味と同じだからね。」
「今年の夏休みは一緒に練習して腕を上げるか?」
夏休みだからと言って2人で気軽に旅行などが出来ない私と南斗の小さな約束…。
「いっぱい練習しようね。」
私が笑顔になれば南斗も笑ってくれる。
籠娘でもいい…。
保健室から出られない子でもいい…。
南斗さえ居てくれるのなら…。
そんな小さな願いさえ、この世界は認めてくれない。
翌日はいつも通りに登校する。
午前中だけの授業が終わり、もう放課後だからと私がホッとため息を吐いた時だった。
「失礼します。」
改まった声がする。
こういう時の私は保健室のベッドを囲むカーテンの影に隠れる事にする。