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籠の中の天使
第10章 快楽と戸惑い
緊張する…。
気不味い顔で俯く南斗が私の病室に居るのに、何を言うべきかすらわからない私は鯉のように口をパクパクさせるだけだ。
「あ…のね…な…なん…南斗…。」
噛み噛みになる言葉…。
南斗が肩を震わせる。
いたたまれない空気に耐えられない。
「ごめんなさいっ!」
とにかく、そう叫んだ瞬間、南斗が大爆笑をして私を見る。
「酷い…、南斗っ!」
「酷いのは咲都子だ。飯も食わずに勝手に教室へ行ってぶっ倒れるとか…。俺がどんだけ心配したかわかってんのか?」
北斗さんのように私の頭をぐしゃぐしゃと掻き混ぜる南斗だけど、そのまま私の頭を引き寄せて抱き締める。
本当に心配を掛けたのだと実感する。
南斗の胸から聞こえる鼓動がいつもと違い激しい心音を奏でてる。
「俺も…、悪かったから…。」
泣きそうな声で南斗が言うから、胸の奥が痛くなる。
「南斗の部屋に帰りたい…。」
「なら、病院の食事を残さずにしっかりと食べて、しっかりと睡眠を摂る事…。それから体力を付ける為に明日からは毎朝のラジオ体操を命じる。」
「やだ…、ラジオ体操とか…。」
「なんでもいい。少しでも身体を動かせばそれでいい。」
そう言って南斗が私の長い髪に鼻を埋める。
「お風呂…、入ってないから…。」
臭いとやだなと思い逃げようとしても南斗はしっかりと私を抱えて離さない。
「めちゃ咲都子の匂いがする。」
「やめてよー…。」
「なんで?俺の一番好きな匂いだ。咲都子の匂いがすると落ち着くんだ。」
指先で私の髪を軽く掻き上げた南斗が耳の裏側でチュッとリップ音を出す。
南斗の唇が触れる部分が熱くなるから耳まで真っ赤にして南斗を睨んじゃう。