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籠の中の天使
第10章 快楽と戸惑い
私が睨んだ程度だと南斗は肩を竦めて笑うだけだ。
「なあ、咲都子…、誤解をさせたなら俺が本当に悪かった。」
改めて南斗の方が謝り出す。
「誤解?」
「俺は無理矢理、峯岸と付き合えとか言ったつもりは無い。ただ、修学旅行の時と同じで、この夏休みも1日くらい向井とか杉山とか、誰でもいいから咲都子が誰かと遊びに行くと言う日があればいいと思っただけだ。」
そうしなければ、私は南斗の部屋から全く出ようとしなくなる。
去年の夏休み明けに、学校へ行きたくないと駄々を捏ねた私の心配をしてるのが伝わって来る。
どんなきっかけでも良いから修学旅行の時のように学校が楽しいと思える私に変わる事が大切だと南斗が言う。
学校は楽しいよ…。
南斗と2人だけになれるのなら…。
伝わらない私の気持ち…。
少しでも伝えたくて南斗の手に指を絡めて恋人繋ぎで握る。
南斗も照れたように頬を赤くする。
「今は…、南斗の部屋に帰りたいの…。」
そう言って南斗の手の甲に口付ける。
「俺も…、咲都子が居ないと寂しいよ…。」
南斗も私の手の甲への口付けを返してくれる。
恋人にはなれない2人の小さな繋がり…。
一瞬の繋がりは、すぐに絶たれてしまうほどに脆い。
病室の扉がノックされて北斗さんが顔を出す。
「面会時間は終わったぞ。」
北斗さんの声で南斗は私の手から離れちゃう。
「また明日も来るから…。」
病院の息子だからと病院の規則を破れない真面目な南斗にもどかしくて寂しくなる。
南斗が出て行くと私の夕食を持った看護婦さんと北斗さんが病室へ入って来る。
「食欲はある?」
北斗さんの質問には素直に頷いた。
先ずは体力を取り戻さなければ南斗の部屋に帰れない。