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籠の中の天使
第10章 快楽と戸惑い
「悪い…、味噌汁だけでいい。今朝は合宿の打ち合わせをバレー部の朝練でやるから時間ねえわ。」
南斗の答えがまた冷たくなってる。
お味噌汁だけでもいい…。
一緒に朝ご飯が食べられるのなら…。
2人で小さなテーブルに座る。
「あのね…、南斗…。」
私の気持ちだけを伝えたい。
そんな私の言葉を南斗が遮る。
「咲都子、夕べは飯を食わなかったろ?ちゃんとしてくれないと俺が北斗に怒られる。」
不機嫌な言葉が投げかけられる。
「ごめんなさい。だから、夕べのご飯を朝ご飯で食べるよ。」
「なら、いいけど…、今日は多分、遅くなるから一人でもちゃんと飯を食えよ…。」
「わかってる。あのね…、南斗…。」
「何?俺、そろそろ行くわ。」
お味噌汁に口を付けただけの南斗が席を立つ。
「南斗…。」
思わず呼び止めて南斗のYシャツの袖を掴む。
「何?」
凄く冷たい目で私を見る。
南斗に何があったのかと思うほど、夕べとは違う人に見える。
「あの…、あのね…、花火大会があるの。」
小学生の頃、南斗と行った花火大会…。
もしも、南斗と行けるのなら、向井さん達にちゃんと断りを入れようと思う。
「花火大会?ああ、週末のやつね。その日からバレー部の合宿が始まるから咲都子も出掛けるなら戸締りをしろよ。」
あっという間に南斗が玄関から姿を消した。
残された私には何が起きたのかすら理解が出来ない。
夕べの南斗は優しかった。
いっぱいエッチな事して私を感じさせた。
それが南斗の愛情だと信じて受け入れたのに…。
夕べの事を無かった事にしようとする南斗に涙が出る。
南斗…。
南斗…、南斗…、南斗っ!
狂ったように南斗の温もりを求めてしまう。
南斗が遠くなる夏休みは始まったばかりだった。