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籠の中の天使
第14章 同情
誰かが私の頭を撫でる。
温かく大きな手…。
南斗…。
南斗…。
南斗…。
私の心が南斗を求めて彷徨う。
「なん…と…。」
目を覚ますとノアが悲しげに笑ってる。
「ノアっ!」
慌てて飛び起きた。
「着いた…。」
ノアが一言だけ呟く。
いつの間にかノアの車は私の家の裏木戸の前に停まってる。
営業時間が終わった街はもう静かだ。
「今日は…あり…がとう…。」
気不味い別れ…。
「またな…。」
最後まで優しいノアのまま、私を車から降ろしデートが終わる。
家に入ると、久しぶりに見るお父さんが缶ビールを飲んでる。
「咲都子…、ここで暮らすのか?」
少しご機嫌なお父さんだと思う。
「ダメなの?」
「いや、好きなだけ居ればいい。ここはお前の家なのだから…。」
私が帰って来た事を喜んでる。
「咲都子?ご飯は食べる?お風呂は?」
シャワー室から出て来たお母さんもはしゃぎ出す。
「ご飯は…要らない。シャワーしたら寝る。」
「そう…。」
久しぶりにお母さんが私に笑顔を見せる。
これで良かったのだ。
私がこの街に戻れば両親が喜んでくれる。
南斗との苦しい恋は捨ててしまえばいい…。
心が壊れそうなほど辛い時はノアが助けてくれる。
あの人には、それだけの力がある。
南斗にはなかった力…。
南斗が苦しむ理由も理解した。
シャワーを浴び、着替えをして自分の部屋で小さくなる。
夢の1日は終わった。
籠娘が見た儚い夢…。
その夢に縋って眠る。
今夜はもう喘ぎ声がしない。
その代わりに酔ったお父さんとお母さんが楽しげに話す声がいつまでも聞こえていた。