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籠の中の天使
第14章 同情



人が1人は眠れそうな大きなソファーに深く腰を掛けたノアが私を抱き上げて膝に座らせる。


「俺の話はいいから、咲都子の話が聞きたい。」


ノアが真っ直ぐに私を見る。


「『たこ八』のおばさんから聞いたんでしょ?」

「他人の主観はどうでもいいや。俺は咲都子の口から咲都子自身の話を聞きたいんだ。」

「つまらない話だよ。」

「つまらないかどうかは俺が決める。」


不意にノアが私の首を掴んで引き寄せる。

息をつく間もなくノアの唇が私の唇に重なって来る。

私を試すようなキス…。

お互いの傷を舐め合うキス…。

ノアが私と繋がりを持とうとするキスに身を委ねる。

南斗はキスをしてくれない。

私はノアとのキスで南斗との繋がりを断ち切ろうとする。

私の唇を荒々しくノアが貪るから、少しづつ口が開いちゃう。


「んぁ…。」


口端から甘い吐息を漏らせば、その吐息ごとノアの舌が私の口を舐めて舌へ舌を絡め出す。

熱いと感じるほどノアのキスは激しく目眩がする。

目を細めてノアを見れば赤い炎が揺らぐのが見える。

ゆっくりと離れるノアの唇…。


「なんで、そんな顔するんだよ?」


ノアが変な事を聞く。


「どんな顔?」

「今にも泣きそうな顔…。俺とキスするのは嫌か?」


切なく呟くノアの言葉で胸に痛みを感じる。


「違うの…。」


ノアは優しい…。

ノアは好き…。

でもノアから感じるのは愛情でなく同情だと思う。

私とノアはお互いの傷を舐め合う関係だ。

南斗が与えてくれる愛情とは全く違うノアの気持ちに、どう応えれば良いのかさえわからない籠娘はノアの激しい感情に流されるだけになっちゃう。

ノアの温もりに縋る狡い籠娘はキスを強請っては南斗の温もりを打ち消そうと必死になっていた。


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