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籠の中の天使
第1章 籠娘…、籠娘…
籠娘(かごめ)、籠娘、籠の中の鳥は…。
絶対に出る事が許されない。
それが遊郭と呼ばれる街の仕来り…。
人売りや人買いが無くなり、戦争も終って、今やコンピューターやA.Iが実用化されとる現代なのに…。
この日本で唯一、残ってる遊郭は今も変わらない。
別に監禁されたりしてる訳じゃない。
実際に働いてる女性は今の時代だと、この街を出ようと思えば簡単に出られるようになった。
でも多分、私は出られない。
だって、この遊郭で生まれ育った子だから…。
お母さんは妓楼の女将…。
ホステスとして雇った女の子に相手をするお客様を付けなければならないからとお店の前に座って仲介人をやってる。
この遊郭という街の意味を小学校の頃は私でも、よくはわかっていなかった。
ただ、初めて話をしたクラスメイトから
「うちのお母さんがね…、咲都子(さとこ)ちゃんとはあんまり遊んじゃダメだって言うの…、なんでかな?」
と言われた時、私は他所のお母さんから見ると、とても悪い子に見えるのだと思いショックを受けた覚えがある。
それが流石に中学生ともなると、私自身が悪いのではなく、私が妓楼の跡取り娘だから自分の娘にはあまり近付けたくない存在なのだと気付く事になる。
「あの子…、ほら3組の相原(あいはら)さん?ほとんど学校に来ない理由は、もうお客の相手をしてるかららしいよ。」
そんな噂まで出たら、もう学校になんか行けない。
そうやって不登校になり家に閉じこもれば、ますます外の世界には戻れなくなる。
妓楼は代々、娘が継ぐもの…。
お母さんの前はおばあちゃんが女将だった。
次は私がお店を継ぐ事になる以上、自分は遊郭という街の籠の中に閉じ込められた籠娘なのだと諦めるしかない。
開き直り、やさぐれてく私に手を差し伸べてくれる人が居る。
「咲都子、俺の学校に来い。」
私にそう言って手を差し伸べたのは持田 南斗(もちだ なんと)…。
うちのお向かいにある妓楼の息子。
南斗は私立高校で保健医をやってる。