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籠の中の天使
第1章 籠娘…、籠娘…
「南斗…、今…、何時間目?」
南斗が勤めてる高校の保健室が今の私の居場所…。
ずっと不登校だった私は未だに教室という場所へ踏み込めない子のまま南斗と一日中、保健室で過ごす。
「そろそろ終礼…。」
南斗は私に背を向けたまま窓際にある机の前に座り、学生のカルテを確認したりする仕事をしてる。
南斗のお母さんは妓楼の女将だけど、お父さんは違う。
南斗のお父さんはお医者さん…。
あの街の片隅で産婦人科を経営し、遊郭で働く女性の為に性病の検査や妊娠の検査を引き受けてる。
病院を継ぐのは南斗のお兄さんである北斗(ほくと)さん…。
だから南斗はお医者さんにはならずに学校の保健医になった。
この学校は南斗のお父さんもお兄さんも卒業してて多額の寄付をしてるから私の立場などの融通が効くと南斗が言う。
「今日は一緒に帰れる?」
私の方へ向いてくれない南斗に不安でいっぱいになる私は少しでも構って欲しくて質問を繰り返す。
ゆっくりと南斗の座る椅子が回転する。
白衣を着た長身の男が保健室のベッドに踞る私を見る。
涼し気な目元…。
優しく笑う唇…。
サラサラの前髪が窓から入る風に揺れる。
「今日は少しだけ遅くなるぞ。」
南斗の言葉に嬉しくなる。
「うん…、平気…。」
どうせ、普通の下校時刻には学校から出たくない。
この学校へ一番早く登校して、一番遅く下校するのは私…。
南斗以外の人とは会いたくないから…。
学校へは私に貧血の持病があり、極度の対人恐怖症を持ってる学生だと持田病院からの診断書が出てる為、人を避けて登下校する許可を貰ってる。
場合によっては保健医である南斗が私の送り迎えをする事も可能だから、ついつい南斗に甘えちゃう。