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籠の中の天使
第3章 学校嫌い
「咲都子…、帰れるぞ。」
保健医の仕事を終えた南斗が私に言う。
もう、窓の外は真っ暗で保健室の窓から見える職員室の窓だけしか灯りが点いてない。
上履きから下足に履き替えて、教職員専用の通用口から学校の校舎を出れば、教職員専用の駐車場が見えて来る。
まだ何台かの車が停まってる中の1台が南斗の車…。
中古の安い小さな白い車…。
他の車は高級車ばかりなのに、南斗だけが安い車だから逆に目立ってる感じがする。
「保健医の安月給だとあんな高級車は買えない。」
他の車をじっと見つめる私の頭を南斗の手が安い車の方へと向けさせて早く乗れと急かす。
「保健医って…、安月給?」
「うちの学校は私立だからまだマシな方だけど、一応はそれなりの進学校だから教員の方が遥かに給料がいいんだよ。」
「なら、南斗はなんで教員にならなかったの?」
「んー…、俺って兄貴みたいに頭が良くなかったから?頭が良けりゃ医者になってたと思うけど、無理だって判断したから保健医。頭の悪い先生に勉強を教えて欲しいと思う学生は居ないだろ?」
そう言って南斗は助手席に座った私にシートベルトを付けて淋しげに笑う。
嘘だ…。
南斗の言葉から、それを感じる。
だって南斗は勉強を教えるのが上手い。
実際、保健室での私の勉強を見てるのはほとんどが南斗だ。
各担当教科の先生が今やってる授業範囲のプリントを保健室に持って来ては代わる代わるに勉強を教えてはくれるけど、いつも私に対して10分程度の説明だけをしたら『後はお願いします。』と言い南斗に任せて保健室から立ち去る。
だから授業課題として出されたプリントでわからない範囲は全部を南斗が私に教えてくれてる。