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籠の中の天使
第20章 愛の差
挑発する私に南斗が嫌そうな顔をする。
「誰が意気地無しだよ。」
「南斗がだよ。」
「冗談じゃねえよ。咲都子にやれるなら俺にだってやれる。」
あの街の人間として、新しい世界に向かって生きる。
それは難しい事だとは思う。
偏見や嘲りという攻撃を受けながら、戦って行くしかない。
それでも私と南斗は独りじゃない。
2人でならきっと頑張れると思う。
「お腹、空いた。」
ノアと暮らしていた私の身体は完全な健康体であり、夕食時にはお腹が空く。
そんな私の変化に戸惑う南斗が目を丸くする。
「えーっと…、オムライスくらいしか出来ねえよ?」
「じゃ、南斗が作って…。」
「咲都子が作れよ…。この部屋に居候するのは咲都子だろ?」
「私は南斗の家政婦じゃありません。」
南斗の愛を感じる分だけ我儘になってる。
ノアに甘えるだけの生活をして来た今の私は強気で南斗に我儘が言える。
「家政婦だとは思ってねえよ。」
不意打ちだった。
私の手を握る南斗の力が強くなったと思った瞬間には南斗の唇が私の唇に重なってた。
それは優雅だとか甘美だとか言えるものじゃなくて、ただ唇に唇を押し付けただけの不器用なキス…。
なのに、いきなり過ぎるキスに私の頭は真っ白になりリセットされてしまったように何も考えられなくなる。
お互いの唇が僅かに離れると
「もう、他のやつとはキスとかするなよ。」
と呟きが聞こえてから再び唇が重なり合う。
やっと南斗に認めて貰えたキスに涙が出る。
まだ子供で拙い愛しかない私の気持ちを確かめるように南斗はキスを繰り返す。
「腹、減ってんだろ?2人でオムライスを作ろう。」
そうやって私と南斗はいつもの生活へ戻る。
そこは小さく古びた部屋かもしれない。
そんな部屋が私と南斗の籠であり、私が南斗の天使として笑って居られる唯一の場所だった。