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籠の中の天使
第20章 愛の差
「南斗こそ…千紗先生とはキスをしたでしょ?」
伊達に南斗を知ってる訳じゃない。
あの時、南斗は私に嘘を吐けなかった。
嘘でも、否定をして欲しかった。
私だけだとキスをしてくれれば、ノアに縋る事はなかったのだと南斗を責める。
「したよ…。脅されて…俺の意思じゃなかったけどな。」
不貞腐れて言い訳をする南斗を愛おしいと思う。
南斗の手を握り、その手の甲へ口付ける。
私はまだ南斗という籠からは出られない。
ノアですら負けを認めた愛を私に与えてくれるのは南斗だけだと思うと南斗の浮気を責める気にはなれない。
もう一度、南斗との繋がりを持つ意味を考える。
「学校を辞めたら…、南斗の傍に居られる?」
私の質問に南斗は悲しい表情を浮かべる。
「咲都子の傍には居てやりたい…、でも…俺は…。」
まだ、あの街の人間のままだと言う南斗が自信を失くす。
あの街は私を傷付ける。
新しい世界へ翔び立つ決心をした私の傍に南斗は居ない方が良いと思ってる。
やっぱり、私も南斗もあの街の籠からは出られない。
それでも…。
「もう、逃げるのは嫌なの…。この先はあの街の子として堂々と生きるつもり…。だから…、南斗の傍に居たい。」
いつか、北斗さんと緋彩さんにも子供が生まれる。
その子達が、あの街で傷付く事がないように私と南斗の2人で守ってあげたいと思う。
「咲都子は…、それでいいのか?」
不安気な南斗の瞳を見て笑う。
「南斗の意気地無し…。」
「何だよ?それ…。」
「北斗さんが言ってた。本当に南斗ってカッコつけてばかりで意気地無しなんだって思う。」
この後に及んで私よりも怯える南斗が情けない。