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籠の中の天使
第21章 繋がり



そこには私が良く知る紅い炎があった。


「satoさんだね?」


老人が確認する。

ノアの祖父と言ってもおかしくないような年齢の人だけど、この人がノアのお父さんだと感じる。


「は、はじめ…まして…、あっ…相原 咲都子です。」


噛みっ噛みの挨拶に顔が熱くなる。


「今日は来てくれて本当にありがとう。こちらの都合で契約を伸ばしたりして本当に申し訳なかったと思っています。satoさんの契約については僕が自分の目で確認をしたかったから、日本への帰国の日が決まるまで待たせる事になってしまった。」


女の人が机にコーヒーを置き、ノアのお父さんがゆっくりと椅子に座る。


「あの…。」


聞きたい事が山ほどある。


「satoさんはこの契約に不満かな?」


紅い炎が私をじっと見つめる。

ノアよりも深い紅…。

沙来さんと同じで嘘は全て見抜く瞳だと感じる。


「不満はありません。でも、私なんかが、こんな大きな事務所と本当に契約とか出来るのですか?」


契約は私が高校を卒業するまでだ。

その後は新たな契約をするか、解除する事になってる。

契約内容は私にとって、かなり有益な内容に偏ってると南斗から聞いた。

仕事はあくまでも学業に影響しない範囲とされている上に、モデルとしてのレッスンなどを希望すれば受けられる形になっている。


「それを確認したいと思ったから、契約は僕の帰国まで待って欲しいとお願いした。」


優しいけど、お父さんの視線は厳しく、私を品定めするようにしっかりと見る。

ここは私みたいなちっぽけな女の子が来て良い場所じゃないのかもしれない。

何よりも、ノアを傷付けた私に父親としては怒ってるのかもと思うだけで身体が竦んでしまう。

揺らぎを知らない紅い炎の前で自分の存在はとんでもなく場違いだったかもと感じて凹むしかなかった。


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