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籠の中の天使
第21章 繋がり
それは私にも覚えがある。
南斗は出来るだけ同じ時間に食事をさせたり、同じ時間に寝るようにと私に言って来た。
完全に時間から切り離されてしまうと人の思考は止まってしまい、何処にも進めなくなるからだ。
「だから、私は咲都に感謝してる。あんなに怯えてばかりだった咲都が凄い世界に行くって決めたのなら、うちの兄貴の時間もいつかは動き出すって思えるから…。」
軽く髪を靡かせた向井さんが笑顔を残して帰った。
向井さんの期待には悪いが私の時間はまだゆっくりとしか動いてくれないとため息が出る。
プロダクションから連絡が来たのは、更に1週間も過ぎた後の事だった。
その日はわざわざ学校を休んで来て欲しいと言われた。
南斗は学校だからと北斗さんが私の保護者として付き添いをしてくれる。
「やっぱり、私なんかじゃ無理とか言われたらどうしよう?」
そこが気になって、ほとんど眠れてない。
「モデルとか…、芸能界とか…、俺に聞かれても…。」
ただでさえ緊張するのに、北斗さんまで緊張するから泣きたい気分になって来る。
ノアのお父さんが経営するレーベルが持つビルのワンフロアがプロダクション用の事務所になっている。
他のフロアにはレコーディングルームや、レーベルと契約してる歌手やダンサー用の個室があると聞いた。
そんな凄い場所に北斗さんと2人で泣きそうな顔で入ってく。
「相原 咲都子様ですね。こちらへどうぞ…。」
と女優のように綺麗な女の人の案内を受けて会議室Aと書かれた部屋に向かう。
会議室に入ると窓の前に立ち、外を眺めてる老人が居る。
「社長、相原様をお連れしました。」
綺麗な女の人がそう言って頭を下げる。
銀色に光る髪の老人…。
杖を握っていて、女の人の言葉にゆっくりと振り返る。