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籠の中の天使
第4章 診察
夜の7時には学校から学生は全員追い出される。
7時を10分ほど過ぎてから私は教員専用の通用門から学校の外へと歩き出す。
職員室の灯りがまだ点いてる。
南斗は職員会議中だ。
電車に乗り一人であの街に帰り、制服のまま商店街にある安っぽいスーパーで買い物をする。
それから家には行かず商店街にあるたこ焼き屋さんを目指す。
『たこ八(はち)』と汚れた看板の付いた小さなたこ焼き屋さん…。
もう店仕舞いだからとおばさんが片付けをしてる。
「あら、咲都子ちゃん。いらっしゃい。」
たこ八のおばさんが笑う。
この人も元は妓楼の女将だった。
息子さんと娘さんが居たけど…。
2人とも普通の会社に就職するからと言って妓楼を他の人に譲ってからはこの商店街でご主人と一緒にたこ焼き屋さんをやってる。
「おばさん…、自転車…。」
私の自転車はこのたこ焼き屋さんの脇に停めてある。
あの街には自転車を停める場所が無いから…。
うちのお母さんは車の免許も持ってない。
お父さんは持ってるけど車は組合の車をいつも借りる。
誰も自転車に乗らない街…。
お店で雇われてる女の子はタクシーで通勤する。
ストーカーになる危ないお客さんから身を守る為だと聞いた。
私が自転車を受け取ると『たこ八』のおばさんが私に小さな袋を差し出して来る。
「売れ残り…、冷蔵庫に入れて明日でも咲都子ちゃんのオヤツにしなさい。」
おばさんがくれたのはたこ焼き…。
貧しい街だから…。
売れ残りのたこ焼きでも、皆んなが有難いと思う。
私もおばさんに
「ありがとう…。」
とお礼を言って商店街を自転車で走り出す。