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籠の中の天使
第4章 診察
教室に居た学生の表情が真面目な顔へ変わる。
「皆さんは対人恐怖症って知ってますか?」
凛と張った声で北斗さんが話す。
「相原さんはその対人恐怖症という病気の為に教室で普通に過ごす事が難しい学生さんです。」
北斗さんの言葉に
「対人恐怖症って…、人とは話したり出来ないって事?」
と茶髪で少し軽い感じがする男の子が茶化す。
「それは、ちょっと違います。一口に対人恐怖症と言っても症状には個人差があり、相原さんの場合は保健医である持田先生や担任の塚本先生、その他の先生達と普通に話せます。」
「じゃあ、ズル休みしてたって事?」
「ズル休みをしてた訳でもありません。相原さんはある事がきっかけで対人恐怖症になりました。」
「イジメとか?」
段々とクラスの皆んながふざけ出す。
「そうだね。もしも、よくあるイジメのレベルだったら相原さんはこんな風に対人恐怖症にはならなかったと思います。昔の彼女はもっと明るくて元気な子でした。僕は医者として彼女が受けた傷の深さはそんな生易しいものじゃなかったと診断してます。」
語気を上げた北斗さんの言葉に教室が静まる。
「イジメよりも辛い事?」
怖々と女の子が北斗さんに質問を投げかける。
「そう…、それは大人でも耐えられないほどの辛い出来事です。それでも相原さんは懸命に頑張って、この教室まで来ました。相原さんの場合、対人恐怖症は知らない人に対する恐怖です。」
北斗さんの説明が続く。
例え同じクラスの学生であっても、私にとっては全く知らない人の集まりなのだと北斗さんが言う。
「だから、無理に友達の様な扱いなどはしないで下さい。ゆっくりと相原さんが慣れるまで無闇に話し掛けたりして怖がらせたりしないようにして欲しいのです。」
「えー?俺、怖がらせたりしないよー?」
「そういうのでも相原さんには恐怖にしかなってないんだよ。」
北斗さんの言葉を茶化す男の子が慌てて口を閉じる。
私を面倒臭い学生だと言わんばかりの表情をする学生の視線を浴び続けて、目の前が真っ暗になる気がした。