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籠の中の天使
第5章 間違ってもいい…
「それより、優希…、修学旅行で峯岸に告るの?」
向井さんの言葉に杉山さんがキャーッと黄色い悲鳴を上げる。
「ちょっ!?理実…、峯岸の事なんか…。」
上地さんが狼狽える。
「茂が言ってたよ。峯岸だって男だもん。モタモタしてたら他の女子に目移りするって…。」
「それって、どういう意味よ?」
「去年までは優希の事を可愛いって峯岸が言ってたけど、最近は言わなくなったって茂が言うんだ。多分、違う女の子に気持ちが変わったんじゃないかって…。」
淡々と話す向井さんとは違い上地さんの顔色が悪くなってく。
「ほらほら、お前ら…、くだらないお喋りならカフェに行ってやれよ。ここは保健室だぞ。」
流石に南斗が杉山さん達を保健室から追い出す。
「次は咲都も一緒に行こうね。」
杉山さんはそう言って笑顔で立ち去った。
「女子高生の恋話とか聞いてられるか…。」
嵐が去ると南斗がため息を吐く。
「女子高生は恋をしちゃいけないの?」
南斗の気持ちが知りたくて聞く。
「恋をするなとは言わないけど、他にも、やる事がたくさんあるだろ?」
保健医としての言葉を言う南斗に悲しくなる。
「私は…恋とかしたい。」
「咲都子がしたいならすればいい…。」
「してもいいの?」
「恋人が出来て、昔みたいに咲都子が笑えるようになるなら俺も北斗も応援するよ。」
南斗の馬鹿…。
文句を呑み込んで保健室のベッドに横たわる。
私は南斗に愛されたいだけなのに…。
南斗が遠い…。
そんな毎日が繰り返される。
平和だとは思う。
それでも私の心の中に降り積もる小さな不安は日に日に強まるばかりだった。