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籠の中の天使
第6章 狡い街
「明日の職員会議って何時に終わるの?」
「午前中には…、って何かあったのか?」
「何かって、修学旅行の服を買ってくれるって言ったじゃん。」
「あっ…、うん、買う。いっぱい買ってやる。」
修学旅行は3泊4日…。
行きと帰りだけ制服着用義務があるけど、中の日は私服になるから南斗が買ってくれる約束だった。
「あんまり、予定スケジュールには参加しないから、いっぱいは要らない。」
そう言って南斗にしがみつけば南斗が私の髪を撫で始める。
「出来るだけ参加しろよ。」
そう言った南斗の唇が私の額に触れる。
「南斗が居てくれるだけでいいの…。」
「知ってる。それでも咲都子は俺が居なくても普通に暮らせる道を探せ…。」
「南斗…。」
「辛い事を言ってるのはわかってるんだ。だけど俺という人間が咲都子の邪魔にはなりたくない。」
「邪魔なんかじゃない。」
「咲都子はまだわかってない。本当の恋だってしてない。いつも俺が傍に居るから俺に恋をしてると思ってる。人付き合いが始まって他の奴とも付き合ってみればわかるようになる。」
南斗が私に対して想う気持ちと私が南斗に対して想う気持ちは違うのだと南斗が言う。
南斗は私を愛してる。
だけど私が南斗に求めてるのは、あの街で行われてる疑似恋愛と同じなんだと南斗が決め付ける。
人付き合いを避け、南斗に頼る事に慣れてしまった私は南斗に縋る為に恋愛してると勘違いしてるらしい。
「あの街が狡いように、あの街の男である俺も狡い男だと思う。」
そう呟く南斗が私の顔中にキスをする。
南斗に縋る事しか知らない私を自分のものにしたい欲望だけで縛り付けてると南斗が告白する。