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籠の中の天使
第6章 狡い街



南斗が私を天使だと呼ぶ理由が少し見えた。

私が嫌いな街は外の世界で傷付いた人には楽園になる。

そこで生まれた子は南斗も私も皆んな天使だと持田先生は言う。

この街で傷付いた天使は翔び立つしかない。

既に大人になった南斗はまだ迷ってる。

まだ大人になれない私もまだ迷ってる。

だって一人で翔び立つのは怖いから…。

持田先生は2人でゆっくりと話し合えばいいと助言してくれる。

タバコを灰皿に押し付けて消した持田先生は


「またおいで…。」


と言って談話室から出て行った。

持田先生と入れ替わりに北斗さんが来て緋彩さんが作ってくれたお弁当を渡してくれる。


「今日は南斗の分もあるから2人で食べな…。」


北斗さんは何も言わない。

言わないけど私に南斗のところへ帰れと背中を押してくれる。


「持田先生にジュースとオヤツをありがとうって言っといて…。」

「親父もたまにはピチピチの女子高生と話がしたいって言ってたから喜んでたんじゃね?ここは検査以外はおばさんとおばあばかりが来る病院だからな…。」


滅びる寸前の楽園は若い人が減ってる。

私を傷付ける私の嫌いな街…。

だけど街が無ければ地獄を彷徨う人も存在する。

持田先生の言葉をゆっくりと考えたいと思う。

南斗と話し合えと言われた。

初めて南斗が迷ってるのだと知った。

自分の未来はまだ見えないけど南斗とずっと一緒に居られる未来を考えたいと思う。

色々と考えながら南斗の部屋で南斗の帰りを待つ事にする。


「咲…都子…。」


部屋に私が居たから南斗が目を丸くする。


「おかえり…。」

「ただいま…。」


南斗はなんとなく気不味いらしい。


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