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籠の中の天使
第6章 狡い街
その日から南斗は私に触れなくなった。
修学旅行の為の服を買ってくれたりする南斗はいつもと変わらない南斗なのに、私は南斗から妹の様な扱いしかして貰えなかった。
修学旅行が始まった。
学校からバスで空港に向かう。
私の隣には必ず南斗が付き添う。
「モッチー…、飴食べる?」
私と南斗の後ろの席に座る杉山さんが座席の背もたれから顔を覗かせる。
「要らね…。」
「モッチー…、冷たい。」
「お菓子ばっか食ってると虫歯になるぞ。」
私とは話さないくせに他の生徒とは話をする。
空港でも杉山さん達とは違うグループの女の子達が南斗に群がる。
「持田先生、白衣着てないと若いっ!」
キャーキャーと騒ぐ女の子達の声に頭が痛くなる。
今日の南斗は普通のスーツを着てる。
ネクタイを締めてて、学校の保健医には見えない。
「俺はまだ若いぞ…。」
修学旅行だからか南斗も少しはしゃいでるようにも見える。
「相原さん…、大丈夫?」
私の心配をしてくれるのは早月先生だ。
現在は担任を受け持ってない早月先生だから保健医の南斗の補助の為に来てる。
早月先生もちゃんと養護教諭の資格を持ってて保健医の代理が出来るらしい。
「多分、大丈夫です。」
「でも、顔色が悪いわよ。」
「飛行機…、初めてだから…。」
家族で旅行なんかした事がない。
最後の旅行は多分、小学校の修学旅行だったと思う。
誰とも話をせずに団体の中にポツンと居ただけの旅行だった覚えしかない。
飛行機は早月先生と乗る。
私の前の席に南斗が座り、南斗の隣には千紗先生が座る。
「持田先生は北海道は何回目ですか?私、いつも沖縄で今回が初めてなんですよ。」
千紗先生のはしゃぐ声がする。