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籠の中の天使
第6章 狡い街
南斗の曖昧な返事が聞こえる。
「塚本先生、貴方が騒ぐと生徒達も真似するから余計なお喋りは控えて下さい。この飛行機は他の乗客の方々もいらっしゃるのですから…。」
早月先生がはしゃぐ千紗先生を嗜める。
「すみません…。」
座席の隙間から小さくなる千紗先生が早月先生に向かってペロリと舌を出すのが見えた。
初日は札幌…。
着いてすぐにホテルに移動して昼食…。
皆んなは大ホールで食べるらしいけど私は南斗と個室で運ばれて来たご飯を食べる。
大ホールだと人数分の札幌ラーメンが用意されてて、ラーメンだけじゃ足りないって人の為にビュッフェもあるって旅行のしおりに書いてある。
私と南斗はラーメンだけ…。
私の部屋は南斗の部屋の隣…。
体調を崩したり、熱を出したりする子を他の生徒から隔離する為の予備の部屋が私専用の部屋になる。
そこで私は早月先生や南斗と食事をする事になる。
もし大ホールで私の体調が崩れたらホテル側に迷惑が掛かる。
それを避ける為に私は籠娘の扱いで修学旅行に参加する。
「午後から札幌市内での自由行動だけど参加出来るか?」
南斗が私のスケジュールを確認する。
私は首を横に振って参加しないと意思表示する。
「なら、着替えて寝てろ。ここは病人用の部屋だ。」
保健医の態度のまま南斗が冷たく言う。
「南斗は一緒に居てくれる?」
冷たくされても私は南斗に縋る。
南斗が居ないと息が詰まって死にそうな気になる。
「咲都子が…、寝付くまでは…居てやる。」
ため息を吐く南斗が呟く。
それでもいいよ。
疑似恋愛でもいいの…。
今の私は南斗の傍に居たい。
南斗が私と南斗の食べた食器を返しに行く間に部屋着に着替えて部屋に敷かれた布団に入る。
皆んなはベッドのある部屋らしいけど、この部屋だけは和室になってて病人に対応する布団が積み上げてある。