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籠の中の天使
第6章 狡い街
「行こう…。」
峯岸君が私の手を握って歩き出す。
ホテルの前には学校が手配した観光バスが並んでる。
「相原さん、参加出来るのね。」
千紗先生が嬉しそうに私に近付いて来る。
学生や先生達が集まってる中で私は南斗の姿を探し回る。
だけど南斗は見つからず、私はクラスの皆んなとバスに乗る。
野球観戦をする為の団体用の首から下げるチケットがバスの中で配られる。
「このチケットはドームから出たら無効になります。決して勝手にドームから出ないように…。」
千紗先生が必死に説明しても
「なんで野球?」
「野球部以外の人間が観ても楽しくねーよ。」
「夕食はドームで食えって事?」
と口々に不平不満を漏らす学生ばかりの団体行動になってる。
食事用のチケットも配られる。
2000円までは使えるらしい。
「足りなかったら、どーすんの?」
「自腹?」
「やだねー。学校観光ってケチ臭っ!」
そんな文句を押さえ込むように千紗先生が説明する。
「ドーム内にはたくさんのお店があります。日本トップのハム企業がホームグラウンドにしてる球場だから美味しい物がたくさんあると聞いてますっ!」
それでも食べ盛りな高校生は
「ハムとかいらなーい。」
「焼肉食べたいー。」
「北海道ってカニじゃないの?」
「お昼がラーメンで夜がハムって侘しい気がする。」
と騒ぐ事を止めはしない。
狭いバスの中で飛び交う様々な雑言に頭が痛くなって来る。
「相原さん…、大丈夫?」
千紗先生が私の顔を覗き込む。
「俺、同じ班だし出来る付き添います。」
峯岸君が私の面倒を見ると言う。
「お願いね…。」
他の騒がしい生徒で手一杯な千紗先生は私を峯岸君に押し付ける。
なんで南斗が居ないの?
南斗が見当たらないだけで、こんな旅行に来るんじゃなかったと後悔する私を乗せたバスは野球観戦というよくわからないスケジュールを消化する為にと札幌ドームへと向かった。