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きっかけは十人十色
第3章 帰宅後
天井を仰いで右腕を額の上に乗せてしばらく目を閉じていたら、着信音が鳴った。
身体を起こしてちらりとスマホ画面を見ると、母親からだ。
はぁ。なんてバッドタイミング。
「はい、もしもし」
『詩乃、あなたやるじゃない』
「何よ、出るなり急に…」
『ばっちり抱きしめられてたじゃないのよ。ふらついて寄り掛かるなんて古典的な手だけど、なかなか大胆なことするわね。我が娘ながらあっぱれだわ』
私はランチバイキング楽しんでくるから、なんて言ってたのに、陰からちゃっかり見てたのね…。
「あれはね、ヒールが床の継ぎ目に引っ掛かってふらついちゃったのを抱き止めて貰っただけ」
『ふーん?そうなの。まぁいいわ。次会う約束したんでしょうね』
「ううん、してない。連絡先は聞いたけど」
『んまぁ、早くしないと他の人に奪られるわよ。逃しちゃダメよ!遠目からでも優良物件の雰囲気漂わせてたんだから。じゃあね』
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