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きっかけは十人十色
第6章 予期せぬ再会②
自分の不用意な言葉で、彼女が一瞬ながら睫毛を僅かに揺らした光景が、脳裏に焼き付いて離れない。
酔いたい気分ではなかったが、いくら飲んでも酔えなさそうだったので、〆にお茶漬けを頼むと、先輩と店先で別れた。

家に帰ると、ネクタイを外してスーツの上着を脱いだ。
コーヒーでも飲もうと思い、すぐにお湯が沸ける卓上ポットに水を入れて、頬杖をついてポットをボーッと見つめながら、田嶋先輩の言葉を反芻していた。
“万一付き合えなかったら縁がなかったってことだろ”“めでたく付き合えたら相手を大事にすれば良いだけの話”―前の彼女は、仕事が忙しくて思うようにデートができなかった。
その内に連絡もマメにしなくなって、忙しさが落ち着いた頃には浮気されていたことと同時に別れを告げられた。
少なからずショックは受けたが、今日起きたことはそれ以上の衝撃だった。全面的に俺が悪いのだが。
ポットから水蒸気が立ち上ぼるのと、今日三度目のため息をついたのは同時だった。
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