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あの時、あのBARで
第2章  BAR・Remembrance

 「それにしても・・よく覚えていてくださいましたね、私たちの事。
 あの時以来、それっきりになってしまったのに」
「初めての客なのにワインまでご馳走してくださって。
 それなのにその後お邪魔することがなくって。申し訳ないです」

 あの時、このバーテンにも私たちの会話はもちろん聞こえていた。
驚きを誰かと共有したくて、というよりはどうしていいか分からず、
目の前にいたバーテンに視線を向けてしまった。目が合うと、衝撃の表情を返してくれた。
そのうえ、この不思議な出会いにと、ワインのボトルをプレゼントしてくれたのだ。
「あの時は本当にびっくりしました。お客様の会話は、まあ聞こえる位置におりますので
 耳に入ってまいります。長くバーテンをやっておりますと
 いろいろな話を聞いてしまいます。
 ですが、あのような不思議なお話はいまだかつて聞いたことがありませんでした。
 なので私まで興奮してしまって、思わずお二人と乾杯したくなってしまいましてね」
あの時、初めて顔を合わせた3人でグラスを合わせた。
でも、何の違和感もなく、それが自然な行為とさえ感じるくらい、
私たちの気持ちは一つになっていたのだった。


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