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嘘の数だけ素顔のままで
第8章 痴漢【3】
 コトブキの背後の座席でハンドバックの金具を遊ぶ気配と咳払いと脚を組み直した複数の気配が同時に起こった。別の誰かが咳払いをしてまた別の誰かが咳払いをした。

 ハンドバックの金具は一定のリズムで音を立てていて、先程と違う別の誰かが咳払いと一緒に脚を組み直した。そのあと、また別の誰かが咳払いをした。気配が起こるその度にコトブキは猫背になり身を小さくした。


 吊革を握ったままの手の平が汗でベトベトだった。目のやり場がなくて正面に坐っていた女の黒いハイヒールをずっと見ていた。その女は膝のうえに手を重ねて乗せていた。左手には結婚指輪がしてあった。


 背後で誰かが立ち上がった気がした。電車が揺れて左右に傾き、床を叩くようなヒールの音がした。ハンドバックを肩にかけ直す気配と女の息遣いが近づいてくる。コトブキの視界の左側に女が入り込んできた。女は、右腕を挙げて吊革に摑まった。


 正面に坐っていた女が吊革に摑まった女を見た。次の瞬間、コトブキは正面の女とまともに目が合ってしまった。コトブキが目を逸らしたその先に、正面の女の左隣の女と目が合って、そのまた左隣の女とも目が合った。サイトのプロフ写真で見た通りのいい女ばかりだった。

 歳は三十代から四十代。目許や口許や髪型や装身具や着こなしや仕草が自立した女の色香で溢れていた。最後に目が合った女がこちらにむかって微笑んだ気がした。


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