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Honeymoon
第10章 いくつかの誤解
「だけど旭。 ここに来たって事は、結局工藤を選んだんだな。 あんたらしい」
……それは違う。
「仕方ねえな。 こっちも旭の事騙してたみたいなもんだし。 色々悪かった」
『騙してた』
だけど最初に遥さんから言われても私はこんな事は信じなかっただろう。
彼は言わなかったというよりも言えなかったのではないだろうか。
どこからが本当でどこまでが嘘なのか。
和泉さんみたいに偽っていたのではなく。
でも最初のあれも、遥さんの姿。
何も無かった事の様になんて出来ない。
「遥さんとは違う出会い方をしたかったです……そしたら」
そしたら。
「……そうだな」
黙ったままの私の頬を遥さんが手のひらで包んだ。
その反対側に彼の唇が押し付けられる。
その暖かいキスに目を閉じて涙が滲む。
頬への、だけど彼と交わした初めての。
やがて惜しむ様にそれが離れた。
思慮深い目をした遥さんが何か言いかけて、口を閉じる。
それは私もだ。
お互いに別れの挨拶を探して諦めた。
彼がその部屋を去った後。
後から後から涙が頬を伝い、崩れる様にその場で泣いた。
床にぱたぱたと小さな水溜りがいくつも出来てそんな自分に驚いて、でも止まらなかった。
「遥…さん。 遥さ…は、る…」
何度も溢れるその名前と涙。
もう枯れて無くなるかと思える位に。
……それは違う。
「仕方ねえな。 こっちも旭の事騙してたみたいなもんだし。 色々悪かった」
『騙してた』
だけど最初に遥さんから言われても私はこんな事は信じなかっただろう。
彼は言わなかったというよりも言えなかったのではないだろうか。
どこからが本当でどこまでが嘘なのか。
和泉さんみたいに偽っていたのではなく。
でも最初のあれも、遥さんの姿。
何も無かった事の様になんて出来ない。
「遥さんとは違う出会い方をしたかったです……そしたら」
そしたら。
「……そうだな」
黙ったままの私の頬を遥さんが手のひらで包んだ。
その反対側に彼の唇が押し付けられる。
その暖かいキスに目を閉じて涙が滲む。
頬への、だけど彼と交わした初めての。
やがて惜しむ様にそれが離れた。
思慮深い目をした遥さんが何か言いかけて、口を閉じる。
それは私もだ。
お互いに別れの挨拶を探して諦めた。
彼がその部屋を去った後。
後から後から涙が頬を伝い、崩れる様にその場で泣いた。
床にぱたぱたと小さな水溜りがいくつも出来てそんな自分に驚いて、でも止まらなかった。
「遥…さん。 遥さ…は、る…」
何度も溢れるその名前と涙。
もう枯れて無くなるかと思える位に。