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スカーレットオーク2
第7章 7 検査
「私には直樹さんの辛さも伯母さんの気持ちも本当にはわからないかもしれませんけど、ずっとそばに居させてください。手放そうとしないで」

 直樹の首に手を回し緋紗は強く力を込めた。

「離さないよ。もう離した痛みは一度だけで十分だ」



 直樹はいつも感情がワンテンポ遅れてついてくる。

身体の反応でやっと自分がそう感じていることに気づいてきた。

それでも緋紗に出会う前は自分の感情をピックアップすることはなかったし、必要性も感じなかった。『感情』を一度知ってしまうと同じ出来事でも不思議なもので重要度が変わってくる。

悲しい思いをすることが決して嬉しいわけではないが不感症な昔の自分よりも、悲しくなって怒って喜ぶ今の自分のほうが直樹は好きだった。



「直樹さんはいつも一人で辛い時を乗り越えてきたんでしょうね。私は短絡的なので深く考えることも得意じゃないから。直樹さんがずっと静かに考えて結果を出すのを待ってるだけですけど。出来るだけ邪魔はしませんから、これからは何でも一緒に乗り越えさせてください」

「ありがとう」



 直樹はなんとか感謝の言葉を告げたがもう胸がいっぱいで言葉が出なかった。

緋紗の胸に涙を流れるままの顔をうずめて少年が母親に甘えるような気持ちで直樹は目を閉じ眠る。

緋紗はそんな直樹が愛しくて堪らなかった。

柔らかい黒い髪を少し撫でて緋紗も目を閉じた。
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