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好きと依存は紙一重
第4章 一難去ってまた一難
 ようやくパソコンが起動すると、すぐさまワードを開いて文字を打ち込む。静かな作業部屋にはキーボードを打つ音と、未亜の息遣いだけが聞こえる。それと、時折彼女の笑い声も。
 1時間もの間、未亜はほとんど手を止めることなくキーボードを打ち続けた。それもようやく終わり、大きく息を吐きながら背もたれによりかかる。

「できた……!」
 すぐに座り直し、できたばかりのシナリオを印刷する。達成感に浸りたいところだが、これからやるべきことがまだある。完成こそしたが、作業は終わりではない。
 印刷が終わるとそれをクリップで挟み、引き出しから猫柄のペンケースを取って寝室に行く。サイドテーブルの上に未亜の長財布と充電中のスマホが置いてある。それらをシナリオの上にのせると、台所へ行く。

 テーブルの上にはひとり分の食事が置いてあり、連はいつもの席で本を読んでいた。
「連、アタシフロイデに行ってくる」
「え? でもこの時間は……」
 連の言葉を最後まで聞くことなく、ビルを飛び出して向かいにあるフロイデへ。看板はCLOSEになっていたが、関係ないと言わんばかりに勢い良く開ける。

「お客さん、まだ開店してないんだけど」
「キャラメルラテ甘さ控えめで。あと、クッキーね」
 いつものカウンター席に座ると、1万円札を叩きつけるように置いた。日向はやれやれと肩をすくめて1万円札を受け取った。
 以前筆が乗ってきたところで閉店時間になったことがある。その時に未亜がゴネたら「1万円払ったらいさせてやるよ」と日向が言った。彼としては追い出すための脅しを兼ねた冗談だったのだが、未亜は真顔で1万円札を日向に握らせると、黙々と執筆に戻った。
 それ以来、集中したい時は営業時間外に押し掛け、高額な場所代を払ってこうして執筆などをするようになった。もちろんそう何度も使える手ではないので、最終手段ではあるが。
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