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好きと依存は紙一重
第4章 一難去ってまた一難
「そう。今書いてる脚本、道化師の夢っていうんだけど、主役が連だったらなぁって思いながら書いてたし、これを機に本格的に役者やってもいいんじゃないかって」
「ちなみにそれ、どないなシナリオなんどすか?」
 連は少し考える素振りを見せてから、口を開いた。未亜はあらすじをかいつまんで話す。連は真剣に話を聞いて適度に相槌を打ってくれるので、話がしやすい。

「ラストはまだ決まってないんだけどね」
 そう言って話を締めくくると、連はあごに手を添え、考え込んでしまった。いつもなら一通り褒めてから改善点を教えてくれるのに、こうして考え込まれるとあまり面白くなかったのではないかと不安になってくる。
「主役の件は、団員達と話し合うて決めます。そやけど、うちはやるつもりでいてはるで。それと、ラストはメリーバッドエンドがええどす」
「前向きに考えてくれるんだ、ありがと。にしても、連がメリーバッドエンドを希望するなんて珍しいね」
 平和主義者の連は、ハッピーエンドを好む。バッドエンドのストーリーでも、どこかに救いがあることを望んでいる。
 以前メリーバッドエンドについて話した時、複雑そうな顔をしていたのは、今も覚えている。

「話の流れからして、ハッピーエンドよりもメリーバッドエンドの方がしっくり来る気ぃします」
 連の話を聞きながらあらすじを脳内で繰り返していると、ラストシーンの映像が高速で流れてくる。彼らのセリフや感情が、雪崩のように押し寄せてきた。心地の良い頭痛が、未亜に襲いかかる。
(ヤバい、書かなきゃ頭割れる)
 気づけば彼女の口元は、綺麗な三日月を描いていた。

「姫さん?」
「いいの書けそう」
 未亜ははちきれんばかりの笑顔で言うと、作業部屋へ向かった。後ろから連の声が聞こえるが、知ったこっちゃない。
 作業部屋に入ると、パソコンを起動させる。
「技術進歩してんなら、即起動できるパソコンあってもよくない?」
 焦れったくて、起動時間に文句を言う。言ったところでどうにもならないし、あまりにも無茶なことを言っているのは自覚がある。
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