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好きと依存は紙一重
第5章 好きと依存は紙一重
「お前さ、どちらかっていうと男性脳って感じだし、男目線で考えてみたらどうだ? 守りたいとか、ずっとそばにいたいとかさ。あ、ずっとそばにいたいってのは、女でも思うか。とりあえず今日はもう帰ってくれないか? これ以上お前の顔見てたら殴りそうだから」
「分かった。じゃあ、お会計を……」
「これがあるからいい」
 日向は未亜の言葉を遮ると、胸ポケットから1万円札を出した。

「そっか。ありがとね、色々と」
 返事はない。日向はお冷を一気飲みすると、厨房に戻って仕込みの続きをした。険しい横顔がはやく出ていけと言っているように見えたので、未亜は荷物をまとめてそそくさとフロイデを後にした。

 雑居ビルに戻り、2階に行こうとすると、団員達の声が1階から聞こえた。少しだけドアを開けて覗いてみると、連が発声練習の指導をしていた。連は未亜に気づくと、手招きをする。
 未亜が中に入ると、団員達は一斉にこちらを向き、にこやかに挨拶をしてくれる。
「皆はそのまま続けとぉくれやす」
 連は団員達に声をかけると、未亜のもとへ行く。

「団長。これ、新しいシナリオ。一応自分でも校正はしたけど、チェックお願い」
「分かりました」
 連は未亜からシナリオを受け取ると、隅に置いてある長テーブルに座って、片手に赤ペンを持ってシナリオを読み始める。最初は真顔で読む連だが、表情がころころ変わっていく。それだけ連が世界に没頭していると思うと、嬉しくなる。
 何度も読み返して何箇所か赤ペンで書き込むと、未亜にシナリオを返した。

「さすがシャム猫せんせ、えらいおもろい話どした」
「よかった……。じゃあさっそく修正を、って、その前に、主役の件は皆に話した?」
 未亜の問いに、連はキョトンとして彼女のスマホを指さした。
「ライン、まだ見てへんのどすか?」
「ライン?」
 言われるままにラインを開いてみると、jesterのグループに30を越える未読メッセージがある。グループトークでは連が自分が主役をやるのに反対する人がいないか聞き、全員が驚きながらも賛成していた。
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