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好きと依存は紙一重
第5章 好きと依存は紙一重
「全然スマホ見てなかったから、気づかなかった。よかった、皆賛成してくれて。それじゃ、修正してくる」
 未亜は軽い足取りで作業部屋へ行くと、シナリオの修正を始める。修正箇所を打ち直していくだけなので、そう時間はかからない。20分もすれば一通り終わる。修正漏れがないか何度もチェックをすると、表紙を入れて人数分プラス3冊分印刷し、ホチキスで止めていく。
 もう少し規模が大きいところなら業者に頼んで冊子にするのだろうが、小さな劇団なので未亜自身がこうして冊子にしていく。連に言えば業者に頼んでくれるだろうが、きっと劇団で稼いだ金ではなく彼のポケットマネーで支払うことになる。それだけは避けなければならない。

「これでよし」
 すべて冊子にし終えると、2番目の引き出しからキャラクターシートを団員の数だけ取り出す。キャラクターシートは未亜が考案したもので、演じるキャラクターの性格や人生、癖などを団員に考えさせるためのものだ。
 最初は純粋に、彼らが少しでも演じやすいようにと用意したものだが、意外なことに未亜の創作活動の役に立つ。
 例えばいつもヒロインに意地悪をする女性がいたとしよう。未亜はただの恋敵としか考えていなかったが、団員は”ヒロインは恋敵だけど嫌いになりきれない。かといって素直になれないのでつい意地悪をしてしまう”と、未亜にはない発想をした。
 シナリオライターは物語の全体を見ているため、キャラクターひとりをそこまで掘り下げられない。メインキャラやお気に入りは別だが、すべてのキャラクターをそこまで掘り下げていては、何年もかかってしまう。

「そういえば今回、連の修正少なかったな」
 未亜は赤ペンまみれのシナリオを見下ろしながら、ポツリとつぶやく。いつもなら少なくても10箇所以上修正されるのだが、今回はほんの4箇所だけだった。それだけ自分で校正できたと思うと、嬉しくなる。
 にやけそうになった顔を引き締め、台本を抱え直して練習場に行く。
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