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好きと依存は紙一重
第2章 jester
2年後、未亜はPCカバンを片手にこじんまりした雑居ビルの1階に入ろろうとドアノブを傾ける。だが鍵がかかっているらしく、ドアノブはビクともしない。猫のシルエットが入った腕時計を見ると、12時半過ぎ。
「フロイデにいるのかな?」
未亜は向かいにある2階建ての建物に目を向ける。1階はフロイデというカフェになっており、よく皆で利用している。
「できればミーティングとかしたかったんだけど……」
PCカバンに触れながら、そっとため息をつく。
1年半前のこと、連はjesterという演劇団を設立し、未亜を専属の脚本家として雇った。これが彼なりの未亜への恩返しらしい。最初は荷が重いと思ったが、小さな演劇団は意外と居心地が良い。何より、フロイデがすぐそこにあるという安心感がある。
カフェフロイデのオーナーである渡辺日向《ひゅうが》という男には、未亜も連も世話になっている。日向とは中学生の頃からSNSで知り合い、未亜の家庭が荒んでいることを知った日向は、「必要最低限のものさえ持ってくれば、住めるように手続きをしてやる」と言って、未亜の住居を探す手伝いや、市役所での手続きなどを手伝ってくれた。ちなみに連が東京の住民になる手続きを手伝ったのも、格安なこの雑居ビルを教えてくれたのも彼である。
しばらくアパートに住んでいた連だが、雑居ビルの1階と2階を借り、1階を練習場に、2階を生活拠点にしている。
「おなか空いてるし、いいか」
未亜は開き直ると、雑居ビルから出てフロイデへ行く。中に入ると小さなカフェは、jesterの団員でいっぱいになっていた。カウンター席に見慣れたハーフアップの金髪を見つけると、その隣に座る。
「ここにいたんだね」
「おや、先生。今日はバイトがあるさかい来いひん思てました」
連は青いサングラスを外すと、目を細めながら言う。未亜の提案で髪を少し伸ばして脱色し、外出時は青いサングラスをするようになった。不良に変装させるのはあまりにもテンプレすぎると思ったが、おかげでここ2年、彼が大槻連であることは気付かれていない。
「フロイデにいるのかな?」
未亜は向かいにある2階建ての建物に目を向ける。1階はフロイデというカフェになっており、よく皆で利用している。
「できればミーティングとかしたかったんだけど……」
PCカバンに触れながら、そっとため息をつく。
1年半前のこと、連はjesterという演劇団を設立し、未亜を専属の脚本家として雇った。これが彼なりの未亜への恩返しらしい。最初は荷が重いと思ったが、小さな演劇団は意外と居心地が良い。何より、フロイデがすぐそこにあるという安心感がある。
カフェフロイデのオーナーである渡辺日向《ひゅうが》という男には、未亜も連も世話になっている。日向とは中学生の頃からSNSで知り合い、未亜の家庭が荒んでいることを知った日向は、「必要最低限のものさえ持ってくれば、住めるように手続きをしてやる」と言って、未亜の住居を探す手伝いや、市役所での手続きなどを手伝ってくれた。ちなみに連が東京の住民になる手続きを手伝ったのも、格安なこの雑居ビルを教えてくれたのも彼である。
しばらくアパートに住んでいた連だが、雑居ビルの1階と2階を借り、1階を練習場に、2階を生活拠点にしている。
「おなか空いてるし、いいか」
未亜は開き直ると、雑居ビルから出てフロイデへ行く。中に入ると小さなカフェは、jesterの団員でいっぱいになっていた。カウンター席に見慣れたハーフアップの金髪を見つけると、その隣に座る。
「ここにいたんだね」
「おや、先生。今日はバイトがあるさかい来いひん思てました」
連は青いサングラスを外すと、目を細めながら言う。未亜の提案で髪を少し伸ばして脱色し、外出時は青いサングラスをするようになった。不良に変装させるのはあまりにもテンプレすぎると思ったが、おかげでここ2年、彼が大槻連であることは気付かれていない。