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好きと依存は紙一重
第2章 jester
「ふふ、シャムちゃんは人気者ね」
 隣の席に座る茜は、おっとりした口調で声をかけてくる。彼女の優しい声は、聞いているだけでもホッとする。
「あはは、人気者は大変だよ」
 冗談めかして言うと、ドアが開いて連が入ってくる。服装が変わっていることから、一度帰って着替えたのだろう。ハーフアップの金髪と青みがかったサングラスが、相変わらず近寄りがたいオーラを放っている。

「うちが最後どしたか。稽古は1時から開始やのに、皆えらい早いどすなぁ。昼餉はちゃんと食べました?」
 見た目と反するはんなりとした喋り方に、いつものことながら気が緩む。
「うん、ちょっとだけね。これからお茶会だからね。いったーい!」
 無邪気に返事をする凛子の太ももを、隣に座る心太がつねった。
「団長になんつー口の聞き方してんだよ。立場弁えろ」
 ふたりのやり取りに、連は苦笑しながらお誕生日席に座る。

「うちは気にしてへんさかい、仲良うしとくれやっしゃ」
 連に言われ、ふたりは渋々返事をする。
 マリーが全員に紅茶を淹れると、にぎやかなお茶会が始まった。

「あ、そうだ。団長殿、どうして団名を宮廷道化師を意味するjesterにしたの?」
 未亜の質問に連は目を丸くし、団員達は連に注目する。団名の由来は、連以外誰も知らない。
「演劇は人を楽しませるものやろう? 人を楽しませる人で真っ先に思いついたのが道化師どしたけど、ただの道化師では品位に欠ける思いまして。それで宮廷道化師を意味するjesterにしたんどす」
 連の説明に団員達は納得するが、未亜は腑に落ちなかった。きっと真っ赤な嘘ではないだろうが、何かを隠しているような気がしてならない。
 だからと言って、この場で問い詰めたりしたら、それこそ品位に欠けるので、納得したフリをして近くにあったバタークッキーを頬張った。
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