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好きと依存は紙一重
第2章 jester
「なんでアタシと連をつっくけたがるかなぁ、あの子は」
 苦笑しながら椅子に座ると、マリーから受け取ったアンケートを流し読みする。心なしか、恋愛ものを希望する者が多い。前作がスラム街の青春ものだった反動だろうか。舞台設定こそバラバラだが、半数以上は恋愛もの希望だ。
 登場人物希望欄に道化師と書かれているのを見つけ、手を止める。

「そういえば、jesterなのに、道化師が出てくる物語は書いてなかったかも」
 jesterというのは、中世ヨーロッパやテューダー朝時代に貴族や王族に雇われていた宮廷道化師のことだ。何故連が宮廷道化師を意味するjesterを団名にしたのかは、未だに知らない。
「あとで聞いてみよ」
 アンケートをまとめ直してクリアファイルに入れると、1階の練習場へ行く。

 練習場にはすでに甘い香りが広がっている。中央には長椅子が縦長にくっつけられ、真っ白なテーブルクロスがかけられている。その上には焼き菓子やチョコレート菓子がずらりと並んでいる。よく見るとスーパーやコンビニなどに売っているようなお菓子が大半だが、皿に盛り付けているおかげで高級なものに見える。
「あ、シャムちゃーん!」
 未亜に気づいた凛子は、駆け寄って抱きついてくる。実際にはそんなに年齢差はないが、歳の離れた妹のようで愛おしい。

「ね、一緒に座ろ」
「いけませんわ。シャム猫先生の特等席は決まっているのですから」
 ティーセットを持ったマリーが、凛子を咎める。それでも凛子が未亜から離れる気配はない。
「なんでマリーがそんなこと決めるの」
「ケンカしないの。ほら、凛子ちゃん。マリーのお手伝いしてあげて」
 これ以上放っておいたら面倒なことになると思った未亜は、凛子にマリーの手伝いを促すと、出入り口から見て右側のお誕生日席の左手に座る。
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