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好きと依存は紙一重
第3章 暗雲
未亜のキーボードの手を叩く手が止まったのは、夕方5時過ぎ。伸びをすると、身体のいたる所からバキボキと音がした。時計を見て集中して書いていたことに達成感を覚え、頬が緩む。
出来上がったプロットをコピーして練習場へ行くと、人っ子ひとりいない。きっと夕方から仕事に出た者もいるのだろう。jesterはまだ小さな劇団だ。知名度は上がってきたが、有名な舞台に立てるほどではない。稽古中の賃金は発生しないため、誰もがバイトをしながら劇団員をしている。
「連は、自室かな?」
2階に戻って連の自室に行ってノックをするも、返事はない。仕事部屋をノックしてみると、返事が聞こえた。ドアを開けて中に入ると、連は珍しくしかめっ面をしている。
「連、どうしたの? 難しい顔をして」
未亜の問いに、連は目線を宙に泳がせるも、諦めたようにため息をついた。
「実は、1ヶ月くらい前から、不審なメールが来るようになりまして……」
「不審なメール?」
未亜が言葉を繰り返すと、連は重々しく頷き、パソコンを操作してデスクトップ画面を未亜に見やすいように動かした。未亜は連の隣に膝立ちをすると、画面を見る。同じアドレスが続くことから、フォルダ分けしておいたのだろう。1番下のメールから、順番に見ていく。
どのメールも演劇を褒めちぎる文章から始まっている。だが、よく読むと役者を褒める文章は一切ない。このメールの主が褒めているのは、あくまでも物語の内容だ。役者について書かれていることと言ったら、アドリブのダメ出しや、ちょっとしたミスの指摘など、マイナスなことばかり。
そして本題は未亜自身のことだ。あれだけ素晴らしい先生なのに、何故舞台で大々的に紹介しないのか、本人にも舞台挨拶をさせるべき、など、未亜の存在をもっと主張してほしいといった内容ばかりだ。
出来上がったプロットをコピーして練習場へ行くと、人っ子ひとりいない。きっと夕方から仕事に出た者もいるのだろう。jesterはまだ小さな劇団だ。知名度は上がってきたが、有名な舞台に立てるほどではない。稽古中の賃金は発生しないため、誰もがバイトをしながら劇団員をしている。
「連は、自室かな?」
2階に戻って連の自室に行ってノックをするも、返事はない。仕事部屋をノックしてみると、返事が聞こえた。ドアを開けて中に入ると、連は珍しくしかめっ面をしている。
「連、どうしたの? 難しい顔をして」
未亜の問いに、連は目線を宙に泳がせるも、諦めたようにため息をついた。
「実は、1ヶ月くらい前から、不審なメールが来るようになりまして……」
「不審なメール?」
未亜が言葉を繰り返すと、連は重々しく頷き、パソコンを操作してデスクトップ画面を未亜に見やすいように動かした。未亜は連の隣に膝立ちをすると、画面を見る。同じアドレスが続くことから、フォルダ分けしておいたのだろう。1番下のメールから、順番に見ていく。
どのメールも演劇を褒めちぎる文章から始まっている。だが、よく読むと役者を褒める文章は一切ない。このメールの主が褒めているのは、あくまでも物語の内容だ。役者について書かれていることと言ったら、アドリブのダメ出しや、ちょっとしたミスの指摘など、マイナスなことばかり。
そして本題は未亜自身のことだ。あれだけ素晴らしい先生なのに、何故舞台で大々的に紹介しないのか、本人にも舞台挨拶をさせるべき、など、未亜の存在をもっと主張してほしいといった内容ばかりだ。