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好きと依存は紙一重
第4章 一難去ってまた一難
「ごめんね、シャム猫さん。オーナーが邪魔しちゃって」
 申し訳なさそうに眉を寄せる真理亜に、未亜は笑顔を向けた。
「ううん、大丈夫。ヒューの言うとおり、筆が止まっちゃって」
 苦笑しながら台本を閉じると、プロットを表示する。そちらもラストは未定になっているので、読み返してもなんの参考にもならないが。

「うーん、私はもっぱら読む方だし、舞台のことはよく分からないけど、他の本を読んでみたらどうかしら? あとは団員の皆に聞いてみるとか」
「そうだねー、最近あんま読書できてないし、本読もうかな。そうだ、映画館とか他の舞台とかも久々に行きたいな」
 突破口になるかどうかは分からないが、久方ぶりに映画や舞台に行くことを考えると、それだけでワクワクしてきた。
「ふふ、少しはお役に立てたかしら?」
「うんうん、すごく立った。ヒューと違って」
「聞こえてんぞ」
 日向がしかめっ面で言うと、ふたりで笑った。

 アイスを食べて会計を済ませると、ふらふらと街中を歩く。近くの演劇場に立ち寄ってみると、10分後に舞台が始まるらしい。マイナーな劇団だが、気分転換になるだろうとさっそくチケットを買って中に入る。
 場内はガラガラで、係員は好きな席に座っていいと言うので、最前列の中央に座った。しばらくすると場内が暗くなり、幕が上がる。
 ポスターを見ずに入ったが、昭和庶民の小話のようだ。戦前の庶民の暮らしをコミカルにした小話がいくつか続いた。どれもくすっと笑ってしまう話だったが、ラストは労咳を患いながらも気丈に振る舞う娘の話で泣き落としに来た。未亜も危うく泣きそうになるが、ぐっとこらえた。

 満たされた心で再び街中をふらふら歩く。気分転換にはなったが、インスピレーションは降ってこない。
「どこ行こう?」
 立ち止まって近くの電柱に寄りかかり、スマホで適当に街のことを調べていると、誰かが未亜の正面で立ち止まった。
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