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第6章 【守るべきものがある人生は幸福ですか？】

「あれ？チーフ、指輪変わりました？」




「えっ！？」




鋭い指摘に思わず部長と目が合う。
気持ちに整理がついてないからまだ皆には言いたくない。




「いいなぁ、記念日だったんですか？また新しいの買ってくれる旦那さん素敵〜！」




バレないよう自分で買ったダミーの指輪。
良く似たものを買ったつもりなのにちょっとの違いも見抜くなんてさすが婚活女子。
思った以上に見られてる。




ニッコリ笑って誤魔化すもちょっと心がズキズキ痛む。
佐野くんともバッチリ目が合っちゃって向こうから逸らしてきた。




私………いつまでこうして嘘つかなきゃいけないんだろう。




サラッと言っちゃえばいいことなのにどこかで躊躇している自分が居る。
そうしたら何の隔たりもなく佐野くんと向き合える！？
あんなに欲しかった二人だけの時間が手に入る！？





ううん、違う。




いざ目の前にしたら足が竦んじゃってる。
ケジメをつけると自分から言った。
それは明らかに離婚を示唆するもので現実のものとなった。
書面上、戸籍上、私は独り身となったのだ。




指輪も外したままでいいはずなのに。




何に対してのプライドなの……？




私は、一体何をどうしたいの……？




わからない………












そんな中、急遽決まった辞令。
部長に呼び出され聞かされた瞬間、フワッと力が抜けていく感じがして。
ずっと引っ掛かっていたものが何なのかわかった気がした。




「本社から辞令を出したいと…」




もう迷いはなかった。
大丈夫か？と聞かれ、そろそろ心配ばかりかけちゃいけないな…とも思った。
二つ返事でOKを出し、入れ替わりで人事も増やすとのこと。
確かにギリギリの人数で今はこなしているからね。




「佐野、ちょっといいか？」




「はい」




奥の会議室へと連れて行かれた佐野くん。
わかっているのは私だけ。




ズルい…？仕方ない…？
でもわかって…？会社が決めたことだもの。
きっとキミはまた駄々をこねるだろうけど、私は止めないから。