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第6章 【守るべきものがある人生は幸福ですか？】

「僕が嫌いになりましたか？邪魔ですか？好きじゃなくなったから行けって言うんですか？」




「違う……そうじゃない」




「じゃ、何で！？」




腕を掴まれ視線が重なる。




「ごめん……私、やっぱり旦那と別れたくない」




「えっ…？」




話が違う…って顔。
散々振り回してるね。
今から酷いこと言うね？
いっぱい傷付ける……ごめんね。




「旦那気付いてるかも……佐野くんとのこと」




「僕ちゃんと話しますから…！」




「話して何になるの！？訴えられるのがオチよ！？それに、そんなこと私がさせない」




「僕は軽い気持ちじゃない！」




「もう続けるの無理……旦那をこれ以上傷付けたくない」




「だから僕を切るんですか…？」




「不倫……だったの、私たちは」




好きになってごめん………
一線越えてしまってごめん………
その手を取らなければこんな別れしなくて済んだのにね。




ギュッと掴んだ手に力が入る。
まだわかってくれないの…？
胸が苦しい。




「瑠香さんは……もう僕が嫌いですか？要らないですか？」




そんな顔して聞かないで。
決心がぐらつく。




「ごめんね、わかって…？佐野くんが不倫の代償を背負う必要はない。事が大きくなる前に関係を終わろう？今の生活、失う覚悟はないの…」




これ以上関係を続けると旦那が出てくるかも知れない…と匂わせておく。




「僕が出来ることってそれくらいなんですか？確かに瑠香さんを苦しめたくないと言いました……それが別れるってことなんですか？」




「ごめんなさい……」




「何だよ……わけわかんねぇ」




頭を抱えて泣かせてしまう。
涙が出るのも今だけだから。
お願い……自分を見失わないで。
これで心置きなく行って…？
私のことは忘れて新しい道を歩くの。




「どうか、辞令は受けて……」




そう言い残し部屋を出た。
一人になった途端溢れ出す激情。
張り詰めていた糸がプツッと切れて嗚咽が漏れていく。





何が正しいのかわからない。
でもこんな関係を続けるのだけは良くないってわかってる。
縛りつけてはいけない。
佐野くんの未来を閉ざしちゃいけないんだ。