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不埒に淫らで背徳な恋
第8章 【本能のまま乱れ咲くのは愛と呼べるでしょうか?】
それは自分でも驚くほど甘ったるい声で本当に自分の声なのか疑うほどだ。
これじゃまた煽ってると思われちゃう。
暗い中でも表情はわかる。
さっきと同じ目をしてる。
頬に手が触れたからまたキスされるんだと思い抵抗した。
「ちょっ…!本気で怒るよ!?無理やりは嫌っ…!」
抵抗する手は呆気なく捕まって無防備になる。
思いきり顔を背けたら壁に押さえつけられていた手は目の前で握られた。
恐る恐る見上げると月島くんは悲しそうに微笑む。
「もう無理やりしませんから……どんなキスなら良いのか教えてください」
「は?」
「マネージャーが好きなキスの仕方…」
「次は唇噛みちぎるよ?」
「それも悪くないですね」
「本気で言ってる?」
「すみません」
急にシュン…としないで。
あの日と被る。
少し曲がったネクタイを元に戻してあげた。
「とにかく今は目の前の仕事片付けよ?残業も今週までだから」
そう、私たちはこんなところでうつつを抜かしてる場合じゃないの。
だからこの手を離しなさい。
「またそうやって誤魔化す…」
今度はふて腐れですか?
唇尖らせて子供みたいに駄々をこねる。
昼間の月島くんは何処へやら。
「誤魔化すも何も、仕事溜まってんだから何の為の残業かわかんなくなるでしょ」
「頑張った分、ちゃんとご褒美くれますか?」
すぐ見返りを求める奴め。
いつから恒例化したのよ、ご褒美システム。
「うーん……じゃ、美味しいご飯食べに行こ」
「二人で?」
「お、おぉ……わかった、二人で」
「やった!絶対ですよ?」
「言っとくけどご飯食べに行くだけだからね?」
「最終日、楽しみにしてます!」
それからの月島くんは人が変わったかのように仕事に精を出した。
ひとつひとつが早いの何のって。
ミスもなく且つ丁寧だ。
やる気出せば本当に使えるヤツ。
商談時も堂々と話せてるし、着実に顔も覚えてもらってる。
驚くほどに順調だ。
一から立ち上げた企画も無事に契約が取れて大成功といったところ。
これから軌道に乗るまで様子見だけどね。