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不埒に淫らで背徳な恋
第10章 【不埒に淫らで背徳な愛なら許されるのでしょうか?】
「福岡に出張…?」
「はい、毎年行ってるのもありますが最近はよく新人研修で足運んでますけど」
仕事終わりだということもあってまだすぐに敬語が抜けない。
というよりそこは不器用な私を演じているのかも。
会社が終わって迎えに来てくれた車内で来週に控えた出張話をしたら運転中にも関わらずグッと手を握られた。
「大丈夫なのか……?」
「え…?何度も行ってるので大丈夫ですよ?」
「そうじゃなくて、前に瑠香が言ってた彼……居るんでしょ」
ドキッとした。
そうか、忘れてた。
無神経過ぎてドン引きする勢いだ。
当たり前だけどやっぱり覚えてるよね。
申し訳ない。
「佐野…だっけ?彼でしょ?最初に連れて来た彼」
「はい……」
もう下手に隠せない。
自分で撒いた種だし。
うんと小さくなる私をクックと笑ってる。
笑われてるからって許された訳じゃないこと、肝に銘じなければ。
「何だっけ?快くんじゃなきゃダメなの…だっけ?」
私の口真似も加えてからかう春樹さんの手を振り払った。
「怒るなって、可愛い俺の瑠香ちゃん」
ハァ…とため息ひとつ。
今のはデリカシーなさ過ぎでしょ、と思う。
悪いのは私だけどメラメラと怒りが沸いていた。
こんなことでイライラするのは……生理前か、と納得する。
ふと大きな手が私の髪を撫でた。
「そんな顔するなよ、悪かった……ちょっと嫉妬しちゃったんだ」
「え…?」
「関係は終わったとはいえ元カレってやつだろ?会った瞬間に奪われちまうんじゃないかとか、どうしても考えちゃうだろ…格好悪いけどな」
「そんな……嫉妬してもらう資格ないです。それに何度も行ってるけど本当に会わないんですよ、万が一会ってもどうにもなりません」
そう言うとハザードをたいて脇道にゆっくり寄せ停車した。
まだ帰り途中でこんなことは初めてだった。
「それ、本当?」
「え…?」
たまに見せる真剣な眼差し。
頬に触れる手は答えを待っている。
「絶対だって言い切れるか?彼に会っても一瞬も揺れないって言える?」
「急にどうしたんですか?」
「答えて…!」