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不埒に淫らで背徳な恋
第10章 【不埒に淫らで背徳な愛なら許されるのでしょうか?】






待って、落ち着こう。
まず会うはずがない。
新人でもない彼がこの講義の存在など知らないはず。
第一名前が変わってる。
聞いてもピンとこないだろう。




お願い、フルネームで見ないで。
東京支社の佐久間だけに留まって。




もし会ったら…?
万が一ってこともあるかも。
どうする…?どうすればいい…?
いや、考えても無駄。
会うはずないんだもん。




会ったとしても元同僚で接するって言ったじゃない。
ここで動揺しちゃダメ。
何の為に離れたの!?
自分の手でそれを壊してどうするの!?
しっかりしろ…!!




噂話だ。
容易く飲み込むな。
例えそれが真実だとしても恐れるな。
もう私たちは終わった仲なんだ。




そう思った瞬間、鼻の奥がツンとして目頭が熱くなる。




そうよ、終わったの。
酷い別れ方したじゃない、忘れたの!?
振り回すだけ振り回して最後は捨てたも同然。
きっともう私など忘れて他の誰かに目を向けている。




自ら手放して忘れられていない哀れな自分だけど、今日という日はそれがバレないように完璧に装わなければならない。




深く深呼吸する。




大丈夫、私は出来る。
とうとうこの日が来ただけ。
講義が終われば一足早くホテルへ帰らせてもらおう。
そう考えながら挑んだ新人研修会。




打ち合わせ通りに進み、もうじき自分の出番は終わりに差し掛かる。
回を重ねるごとに慣れて全てにおいて臨機応変に対応出来ている手応えはあった。




だからこの日も順調に次の人にバトンタッチ出来るはずだったのに。




講義中に途中入室してきた人影。
プロジェクターを使ってスクリーンで説明していた為に照明を落としていたから周りはすぐには気付かなかったが、目を向けた私にははっきりわかってしまった。




忘れるはずなかったシルエット。
マイクを通して説明していた途中で固まる私。
いとも簡単に全精神を持っていかれてる。
あれだけ自分に忠告したというのに。




スクリーンに映る映像は変わっていて後ろから小声で名前を呼ばれて初めて我に返ることが出来た。




しどろもどろで説明を再開する。
身体が熱くなる衝動に駆られた。
薄暗くとも目は合っていた。
真っすぐ私を見ていた気がする。
何食わぬ顔して一番後ろの席に着いた彼。









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