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不埒に淫らで背徳な恋
第2章 【秘密を共有するのは罪ですか?】




「あのね、オンオフはっきりさせてるだけよ。今は完全にプライベートだから声張ってないだけ」




「違います…よね?僕にはその声が泣いているように聞こえます」




やっぱり声変だったんだ。
泣いた後だから上手く演技出来なかった。
でも見抜かれたからって全部話すことはない。




「僕の勘違いですか…?」




電話越しなのに熱くなる身体。
お願いだから今は踏み込んで来ないで。
流されちゃいけない。




「アハハ、変なこと言ってないで早く帰って休みな?明日から本社との定例会議に参加してもらうからね」




「はい、宜しくお願いします」




電話を切った後、ネカフェに向かいながら頭の中は佐野くんが占領していた。




ズルいよね?あのセリフ……どこで覚えたんだか。
すんなり懐に入って来る。
顔見れない状況で良かった。




いつもあのトーンで甘えて来たり攻めて来たり。
仕事は卒なくこなすし容姿端麗で文句の付けようがない。




平気であんなセリフ言ってくるんだからこっちも気が抜けないわよ。
面と向かって告白もされてるわけだし?
上司と部下の一線は何が何でも引かないと。
公私混同は乱れのもと…!!




頭ではそう思って自分に喝を入れるのに同じくらいのタイミングで至近距離で見つめ合った時の彼の顔と視線が鮮明に蘇ってくる。
甘く囁くあの口元。
一瞬で動けなくするあの眼差し。




電話で声を聞いたから変な妄想が浮かぶ。




途中コンビニへ寄って足早に向かう。





もう居ないってわかってるけど一人になりたいから騒がしいネカフェではなく、自然と会社の前に立っていた。
会社に寝泊まりなんて、私らしいでしょ?
独身時代はよくやったな。




明かりも消えててホッとしてる。
暗証番号を押して中に入ろうとしたら逆にドアが開いた。






「え?チーフ!?」




スーツにリュックスタイルの佐野くん。
帰ったんじゃなかったの?
電話切ってから1時間も経ってるのに。




「僕も今帰ろうと…あ、会社に何か忘れ物っすか?」




何から話せばいいのか。
この感情を理解するのにあとどれくらい時間が必要なのかさえわからない。
ただジッと見つめて動けない私。
“安心感”とでも言うのだろうか。











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